2005年5月市会 国民健康保険事業特別会計等補正予算案についての賛成討論
No.8
日本共産党市会議員団は、議第132号 平成17年度京都市国民健康保険事業特別会計補正予算、議第133号 京都市老人保健特別会計補正予算案について、繰り上げ充用は必要な会計処理上の手続きとして賛成をいたします。しかしながら、京都市において、もっと努力すべき改善点は多くあります。そのことを指摘し討論いたします。
まず、本市が努力すべき点の第一は、一般会計からの繰入金の問題です。京都市は一般会計繰入金を総額では増やし、努力していると言われます。しかし、一般会計繰入金は、法定分の基盤安定繰り入金の部分と任意の保険給付費等の繰入金の二つに分けられ、京都市の努力が現れる部分は、任意の保険給付費等の額です。その額は14年度では75億円、15年度では69億円、16年度見込みでは66億円と減らしてきています。これでは、精一杯努力しているとは言えません。総額としての確保額の目標額をもつとしても、任意の繰入額の予定額も持ち、基盤安定繰入金額が多くなった場合でもそのままの予算を計上すれば、平成14年度実績で、今年度の保険料の値上げをしなくてすみます。任意の繰入額としての予算を最大限確保することを強く求めます。
第二の改善点は短期証・資格証明書の発行についてです。H17年3月の時点で短期証・資格証明書・未更新をあわせると23,757件にもなり、年々増加しています。慢性疾患で治療中の方は3ヶ月で治る保障がない中、次の更新を心配しながらの治療になります。健康を維持・回復するにあたって良いわけがありません。しかも、滞納分があり、短期証になっている場合は、受領委任払い制度や一部負担金の減免制度は原則利用できないことになっています。委員会の審議では、機械的に短期証・資格証明書を発行したり、受領委任払い制度などの利用を禁止しているわけではないとの答弁はありましたが、保険証は市民にとって命綱です。この命の綱を切るようなことを行政から絶対にやるべきではありません。窓口では丁寧な相談に乗り、機械的に短期証・資格証明書の発行をしないのは当然のことです。しかし本来は、命綱の国民健康保険証はすべての市民に発行し、発行してからでも分割納付や減額の相談にのったり、必要な指導もできるはずです。一歩間違えれば、市民の命を切り捨てることになりかねない短期証・資格証明書の発行はやめるべきです。名古屋市ではこのような立場で、短期証・資格証明書の発行はほとんど実施されていません。京都市としても改善すべきです。
第三に今年度からの賦課方式の変更による国民健康保険料の値上げの問題です。高すぎる中間所得層の保険料負担軽減は当然です。しかし、その財源を低所得者層にかぶせるやり方はとんでもないまちがいです。説明責任ということで、保険料の算定方式の変更を市民新聞や国保だよりに掲載したり、6月10日までコールセンターを設けることになっていますが、本当に必要となるのは、保険料の納付書が届けられた後からです。具体的に、保険料がそれぞれいくらかになるのかがわからない段階で、難しい制度の説明のみを実施してもそれは説明責任を果たしたことにはなりません。窓口には「高すぎる。間違いじゃないか。」「減額してほしい」という相談がたくさん寄せられることは間違いありません。丁寧な対応ができるよう相談体制を整え、市民の暮らしの実態、保険料負担の大変さに耳を傾けなくてはなりません。各区役所での状況をしっかりと把握し、低所得者対策と同時に高すぎる保険料全体を引き下げることを重ねて求めておきます。
そして、根本の問題として国の責任について述べます。政府は、1984年に国の負担を実質、医療費の45%から38.5%に引き下げました。この国庫負担を元に戻す事で国保財政を建て直し、高すぎて払えない人が増えている保険料を引き下げる事こそ必要です。国保財政を立て直す為にも、国に対して国保への国庫負担を元に戻すように強く求めるべきです。
国民健康保険制度の改善は待ったなしの課題です。京都市は政府における抜本改革への期待の答弁を再三されていますが、今、政府がすすめようとしている抜本改革は市町村や国民にとって真に改善策と言えるものなのか見極める必要があります。現に厚生労働省は「一元化」の名で、市町村が運営する国保を都道府県単位で統合する計画をすすめています。このことにより、自治体独自の支援策に対しての規制がかかるのではないかと多くの自治体から心配の声も出ています。審議の中でも調整交付金の国から府への一部移譲について、給付費の割合から算定されると交付金の減額の可能性もあると答弁がありました。結局、国の責任を棚上げしたまま、国民健康保険制度の根本的な矛盾を解決することは不可能です。まず、国が財政面で責任を果たすことが第一です。よって、政府に対して、議会と自治体あげて、国民皆保険制度の継続と、住民の命と健康を守るために、国の財政面での責任を大いに求めるべきです。
さらに、審議において、京都府からの補助金が少ないことが問題となりました。京都府の補助対象事業として、9億円の事業を行っているのに、府からの補助額は11%程度で、16年度見込み額でも1億500万円です。補助率は決められていないということですが、少なすぎます。市民一人当たりの都道府県別補助金でみても、平成15年度で京都府は286円ですが、多いところでは札幌市で1581円、横浜市で1429円、近隣の大阪市では892円、神戸市では722円ですから、京都府は非常に少ないと言えます。与党議員からも「府への働きかけが弱い」という指摘がありましたが、府市協調の現実が知らされた思いです。府の補助金の増額をさらに求めるべきです。
次に老人保健についてです。繰り上げ充用の理由として、支払い基金などからの交付金が法定負担額を下回ったためと説明されています。全額追加交付されるということですから、この点については問題はありません。さらに改善すべき点は一部負担金の未償還についてです。この間、各区役所の努力で、10万円以上の方に訪問をして解決したという報告もきいております。しかしながら、H14年10月〜H15年9月の未償還者数は1481人、未償還金額は14,697,991円残されています。さらなる努力を求めます。さらに問題点として、一度登録をすれば次回からは自動的に登録の口座に振り込まれるとのことでしたが、郵便局における口座には振込みができないことになっています。銀行が近くにない地域では郵便局が頼りです。京都市も身近な窓口として敬老乗車証の受け渡しを依頼しているではありませんか。郵便局においても振込みができるように早急に改善を求めます。
以上、長引く不況に加え、年金の減額や増税等による政府の国民負担増額の政策は、住民の暮らしをぎりぎりのところまで追い詰めています。住民の命を守る立場で、今こそ京都市が独自にどこまで、支援策を持つのかが問われています。同時に国にしっかりと財政責任を求めることを指摘し、賛成討論といたします。