2006年9月市会 「医療制度『改革』の見直しを求める意見書」の提案説明
No.13
日本共産党市会議員団は、医療制度「改革」の見直しを求める意見書を提案しておりますので、代表して提案説明を致します。
10月から、京都市内の70才以上の現役並み所得者で、医療費負担が3割となる方は1万8千人に及びます。中でも、8月から、住民税の老年者控除の廃止や公的年金控除の縮小などにより、新たに現役並み所得者とされた高齢者は、医療費の患者負担が1割から2割になっています。さらに、10月には2割から3割負担となり、わずか2ヶ月で3倍の負担の増大となります。福祉総破壊の構造改革路線を情け容赦なく進めて、国民負担増を行ってきた自民党・公明党の責任は重大です。
現役並み所得者は、住民税の課税所得が年間145万円以上で、年収が夫婦2人世帯では520万以上の方です。決して“高額所得者”ではありません。国民全体のなかでみればごく平均的な収入です。政府は、負担増を正当化するために、高齢者と現役世代との公平をいっていますが、病気は公平にはやってきません。病気にかかりやすく、治療にも時間がかかる高齢者の負担は、現役世代より低く抑えることこそ公平です。現役並み所得者と名づけて高齢者に負担増を押し付け、その範囲を税制改正で拡大していく卑劣なやり方を認めるわけにはいきません。日本の医療費は、発達した資本主義国のなかで経済の規模に比べて低い水準にあるのに、患者の窓口負担は突出して重いのが特徴です。窓口負担は引き上げるのではなく、引き下げが必要です。
さらに、公的保険のきく医療と保険のきかない医療を組み合わせた混合診療の本格的導入が進められようとしていますが、医療の必要性よりも、所得によって、受けられる医療に格差が生じるもので、国民皆保険制度を崩壊に導くものです。政府は「必要な医療は保険適用する」と答弁していますが、保険外負担の拡大を許さず、保険でだれでもどんな病気でもみてもらえる仕組みを充実させることこそ必要です。日本医学会副会長・東大名誉教授の出月康夫さんは「この世界に誇るべき皆保険制度が、崩壊の瀬戸際に立たされています」と警鐘を鳴らしておられます。
次に入院の問題ですが、介護保険に続き、医療保険の療養病床の入院費用負担が10月から新たに増えます。すでに、厚生労働省は診療報酬改定で7月から、療養病床入院患者を医療の手間のかかり方で分類する方法を持ち込み、手間のかからない医療区分1とされた方の報酬を大幅に引き下げました。全体の半数を占めるこの人たちを療養病床から追い出そうとするものです。病院としての経営も厳しくなる事と政府の療養病床の削減計画を前に、京都市内においても、すでに、療養病床を一般病床に変更しているところも多くあります。その結果、在宅での療養が困難な患者さんは、3ヶ月毎に次々と病院をさがし、転院しなくてはならない状況が激化しています。療養環境が転々と変わることが患者さんの病状に良いはずがありません。病院探しに家族も疲れ果てています。「年寄りは早く死ねと言われているようなものだ」と怒りの声は後を絶ちません。
こういった状況の上に、10月から医療区分1の方の食費全額と居住費を新たに徴収することになり、入院費用は総額約12万円以上となります。国民年金収入を大きく上回るもので、到底払える額ではありません。介護保険の施設では、昨年10月から食費・居住費が入所者の自己負担となった結果、退所に追い込まれる人が相次いでいます。今回の改悪は、こうした事態を医療分野にまで広げるものです。
今後も、2008年4月からは、75歳以上のすべての高齢者から保険料を徴収する高齢者医療制度が導入されようとしています。この制度には、保険料滞納者から保険証をとりあげる措置が盛り込まれています。また制度導入と同時に、現役並み所得者を除く70才から74才の高齢者の患者負担が1割から2割負担に引き上げられることになっており、不安の声は大きく広がっています。
年金収入が減らされている下での、医療費負担の増大は、受診を抑制し、早期発見、早期治療を後退させるものです。意見書は、医療制度「改革」による高齢者を中心とした自己負担増大の施策は中止し、高齢者医療制度や混合診療導入を見直すよう求めもるものです。同僚議員の皆さんの賛同を求め提案説明とします。